この記事では旭化成が注力している研究活動についてまとめています。
基本情報
何をしている会社?
旭化成株式会社は大手総合化学メーカーの一角。
化学、繊維、住宅、建材、エレクトロニクス、医薬品、医療等の事業を行う日本の大手総合化学メーカー
総合化学業界における国内売上は第3位
事業セグメントは「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つ
売上、業績、年収情報
- 売上高 2兆7265億円
- 営業利益 1284億円
- 営業利益率 4.71%
- 自己資本比率 25.4%
- 平均年収 760.5万円
- 平均年齢 41.5歳
- 平均勤続年数 13.9年
2022年は半導体不足、中国ロックダウンによる需要減退、原燃料価格の高騰などで減益。。。
求める人材像
旭化成で働く人財が必ず持つべき価値観として
「誠実」誰に対しても誠実であること。
「挑戦」果敢に挑戦し、自らも変化し続けること。
「創造」結束と融合を通じて、新たな価値を創造すること。
https://www.asahi-kasei.com/jp/company/vision/
『誠実さ』・『チャレンジ精神』・『創造性』がキーワードになりそうです
また、人財採用室長より求める人物像は
1.未知を恐れず、挑戦できる方
2.周囲を巻き込み、チームワークを大切にできる方
3.意欲をもって主体的に行動できる方
https://recruiting-site.jp/s/asahi-kasei-pl/7089
のようです
研究・開発内容
有価証券報告書を参考に2022年度で進捗した研究・開発内容をまとめました。
全社の取り組み(研究開発費137億円)
アルカリ水電解システムの開発
水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業の一環として開発を実施中
CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発
旭化成は世界で初めてCO2を原料にするポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを開発
(それ以前までは、ホスゲン(有毒化合物)を使用していた)
これはすごい。。。だからCO2の活用に注力しているのですね!
CO2を原料とする化学品製造プロセスを開発中
- CO2を原料にするジフェニルカーボネート製造プロセス(2018年実証完了)
- CO2誘導体を利用したイソシアネート製法の開発 (現在開発中)
ゼオライト吸着材を用いたCO2分離回収システムの開発
バイオマス原料由来のポリアミド66の実用化検討
バイオマス原料をベースにしたヘキサメチレンジアミン(HMD)を開発
バイオ由来のHMDをポリアミド66用の原料への可能性を評価・検討中
BLUE Plasticsプロジェクトの取り組み
再生プラスチックのリサイクルチェーンをブロックチェーン上で管理・可視化し
消費者が安心して再生プラスチックを利用できる環境整備
XRP(セルロースナノファイバーコンポジット)の開発
バイオ由来の素材:セルロースナノファイバーとエンジニアリング樹脂をナノコンポジット
ナノコンポジット化することで素材の機能化と環境技術の両立を目指している
セルロースナノファイバーからセルロースナノコンポジットまで
一貫した製造プロセスを保有しているようです!
エンジニアリング樹脂発泡体の開発
自動車の車体軽量化に寄与する、構造部品向けエンジニアリング樹脂発泡体の開発を推進中
⇒ 具体的にはポリアミド発泡体 高い発泡倍率と吸音性能が強みの素材
深紫外LED/深紫外レーザーの開発
殺菌、ウイルス不活性化に最も効果が高い、265nmを高出力で実現できる深紫外LEDを開発
⇒ さらなる高出力化、LED基盤の大口径化、高品質化に取り組む
2019年に世界で最も短波長のレーザー発振に成功
⇒ ヘルスケア・医療分野への応用を検討(ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析)
マテリアル(研究開発費338億円)
基盤マテリアル事業
アクリロニトリル事業にて触媒のブラッシュアップに継続的に取り組み
パフォーマンスプロダクツ事業
自動車内装材、アパレル、おむつが重点マーケット領域
下記繊維製品のサステナブル対応、高付加価値化、生産プロセス改良のための研究開発
- 人工皮革「ラムース®」
- ナイロン66繊維「レオナ®」
- キュプラ繊維「ベンベルグ®」
- ポリウレタン弾性繊維「ロイカ®」
- 各種不織布
新事業領域として、新規セルロース素材の事業化、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組む
高機能ポリマー事業として
- 新たなポリマー設計による高剛性・易成型性を付与したポリアミドの開発
- 次世代低燃費タイヤ用変性S-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)の開発が進捗
環境負荷低減に貢献するバイオマス由来への原料化、リサイクル原料の積極的な活用を検討
スペシャリティソリューション事業
電子材料事業では、半導体プロセスで利用される感光性ポリイミド「パイメルTM」、感光性ドライフィルム「サンフォートTM」などの
独自技術による先進化、高付加価値製品の展開を進める
セパレータ事業では高分子設計・合成、製膜加工や塗工などのコア技術を生かし
リチウムイオン電池用セパレータ、鉛蓄電池用のセパレータの開発に注力
電子部品事業では、「音」「磁気」「ガス」のセンシング技術を主軸とした
省エネ・健康・快適に繋がるソリューションを提供できる技術およ製品開発を推進(ハード面、ソフト面両軸で開発の様子)
住宅(研究開発費37億円)
住宅事業
「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を継続
シェルター技術については、安全性、耐久性に加えて居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を進めている
住ソフト技術については、健康・快適性と省エネを両立させる環境共生型住まいを実現する技術開発に注力
建材事業
軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨構造素材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進
ヘルスケア(研究開発費474億円)
医薬事業
免疫領域(SEL、移植など)、整形外科領域(骨、疼痛など)、救急領域を中心に積極的な研究開発を進めている
創薬技術については世界中の企業や大学とコラボレーションを積極的に推進
医療事業
治療の可能性を広げ、医療水準の向上させる製品、技術、サービスを提供を目的
人工腎臓、血液浄化治療、輸血製剤の白血球除去、製剤のウイルス安全性確保など
バイオプロセス分野における技術をさらに発展させている
クリティカルケア事業
突然の心肺停止からの生存率を向上する技術開発を原点として
急性心筋梗塞・脳卒中・呼吸困難等の救急医療に対する新規医療法や技術展開と提供を行っている
今後の研究方針(中期計画より抜粋)
重点戦略分野として下記3分野を設定
「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「資源循環(サーキュラーエコノミー)」「ヘルスケア」
上記に加えて、重点技術プラットフォームとして
「R&D DX」= デジタル技術を駆使した研究開発のDX推進
⇒ 例えば・マテリアルズ・インフォマティクス、IRランドスケープ、デジタルプラットフォーム
技術戦略の選定やマーケットトレンドの先読みに活用する!
さらに、次の成長をけん引する10の事業を選定
- ①水素関連
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NEDOグリーンイノベーション基金事業の実証内容の早期事業化を図る
「大規模アルカリ型水電解装置の開発、グリーンケミカル実証」
- ②CO2ケミストリー
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CO2ケミストリー、CO2分離回収システムの開発推進、多面的展開を進める
- ③蓄エネルギー
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セパレータ事業の成長追及、知見を活かした新しい事業展開
- ④自動車内装材
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スエード調人工皮革「Dinamica」に高い技術力
環境適応性を高め、人工皮革No.1ブランドを目指す
- ⑤デジタル関連ソリューション
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電子部品事業と電子材料事業の融合を深め、既存製品の価値向上
車載用用途、スマホやタブレットなどデジタルデバイスへ活用を進める
電子部材事業はセンシング技術を強みに
⇒ 電流センサ、ガスセンサー(CO2、アルコール)、磁気センサ、ミリ波レーダー
電子材料事業は最先端の半導体部材に
⇒ 感光性ポリイミド、感光性ドライフィルム、高機能ガラスクロス、エポキシ樹脂硬化剤
- ⑥北米・豪州住宅
- ⑦環境配慮型住宅・建材
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ZEH、ZEH-M、高性能断熱材「ネオマフォーム」
- ⑧クリティカルケア
- ⑨グローバルスペシャリティファーマ
- ⑩バイオプロセス
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ウイルス除去フィルターや装置事業の推進
まとめ
- 国内第3位の大手総合化学メーカー。41歳で731万が平均的。経営状況は良好。
- 事業領域は3つ。「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」
- 重点戦略分野は3つ。「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「資源循環(サーキュラーエコノミー)」「ヘルスケア」
- 水素関連事業、CO2活用技術の開発に特に注力している印象
- リチウムイオン電池のセパレータや、人工皮革、センシング材料など車向け部材開発に積極的
- ヘルスケアでは旭化成子会社、M&Aを通じて、医薬事業の展開、医薬装置開発を進めている
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